「この人、この仕事向いてなくない?」と感じる違和感の正体
数人〜数百人規模のベンチャー企業やスタートアップ企業を転々とした後に、従業員1000人以上の大企業に入社すると、カルチャーショックを受けた。
特に驚いたのは、適材適所がほとんど考慮されない人事制度だ。明らかにその業務に適性がない人が配置され、結果として生産性の低下が当たり前になり、チームワークが皆無となる。
例えば、以下のような事例を目の当たりにした。
- ITに疎いのに、ネット商材を扱う部門のマーケティング部長に就任
- Webサイト運用を担当したことがない人が、Web運用部門のリーダーに
- これまでコールセンターにいたITに疎い人が、Webリニューアル部門に異動
このような配置が行われると、一定の経験や専門性を持った人からすると「なぜこの人が…?」という空気になり、業務の進行が著しく遅れる。では、なぜこんなことが起こるのか?
2. 上層部が「適材適所」の重要性を理解していない
組織の多くは「適材適所」よりも、「とりあえず埋める」「ポジションを埋める」ことが優先されており、人材配置が戦略的に考えられず、場当たり的な人事異動が繰り返されている。
例えば、先述の 「Web運用経験のない人がWeb部門のリーダーに」 というケース。実際に業務を進める中で、
- 基本的なWeb運用の知識がなく、専門用語を理解できない
- 重要な意思決定ができず、現場が混乱
- 結局、部下がリーダーをフォローする構図になり、業務効率が悪化
という問題が発生した。組織の成果よりも「管理が楽かどうか」が重視されるため、適性なんて二の次になるのだ。
3. 「適材適所」を把握する能力がない
上層部に「人を見抜く力」がなければ、適性のある人材を適切なポジションに配置することはできない。特に日本企業では、勤続年数 や 社内政治のうまさ が評価される傾向にあり、能力や適性は軽視されがちだ。
実際、冒頭の事例は「長く会社にいて社長に気に入られているから」という理由でIT部門のマーケティング部長に任命された例だ。しかし、その人はIT部門の経験が一切なく(営業経験しかない)、IT知識もゼロ。その結果、
- 部下が一からネット用語を教える羽目になる
- 本来リーダーが担うべき戦略決定が進まず、部門全体が迷走
- 組織の成長スピードが鈍化し、競争力を失う
さらに、重要ポストが適材適所ではない場合に起こる悲劇が、「よく分からないまま部長が社長に耳障りの良い報告だけをする」→「根本課題は解決しないまま」→「現場の士気が下がる」→「業績低迷」という負のループが発生する。
4. 「とりあえずゼネラリストにしよう」とする文化
日本企業では「特定の分野に特化するよりも、色々な仕事を経験するほうが良い」という考え方が根強い。その結果、得意なことに集中する機会が奪われ、専門性を活かせない。
例えば、Webデザインが得意な社員がいたにもかかわらず、「デザインだけじゃなく、営業もやってみないか?」とジョブローテーションを強要される。結果として、
- 専門スキルの伸びが鈍化し、キャリアの方向性がブレる
- 本人のモチベーションが低下し、生産性が落ちる
- 組織全体で「専門家が育たない」
特化型の人材よりも、なんでもそこそこできる人のほうが管理しやすいという発想が、適材適所を阻害している。
5. 「人の意思や適性を考慮しない」というのが一種の経営戦略
経営側からすると、「適性を見極めて配置するのは面倒」と考えるケースも多い。つまり、
「とりあえず適当に配置して、大きな問題がなければ問題なし」
という考え方だ。
例えば、コールセンターにいた人がWebリニューアル部門に異動させられた 事例では、
- ITに関する知識がなく、業務を理解するのに膨大な時間がかかる
- 重要な技術的判断ができず、プロジェクトの進行が遅れる
- プロジェクト遅延が恒常化する
外部から見ればプロジェクト進行スキルが不足していることは明らかなのだが、企業側は「配置ミス」とは考えず、プロジェクトを担当した取引ベンダーに責任転嫁する。
しかし、そもそもの適性や本人の意思を考慮しないまま人材を配置することが問題なのであり、外部に責任を求める組織に成長はない。
6. 「社内政治で誰をどこに置くか」が重要視される
適性よりも「社内のバランス」や「しがらみ」で人事が決まることが多い。特に大企業では、
- 誰をどのポジションに置くかが、派閥間の交渉材料になる
- 実力よりも「昇進させるべき年次」に応じた人事が行われる
- 「適性のない管理職」が増え、組織が硬直化する
結果として、優秀な人材ほど辞めていき、組織の指示に従うことを優先し、安定した福利厚生を求める社員が増える。
こうして、組織全体の活力は失われる。
7. 結局、適材適所を考えない大企業組織の未来は?
- 無能な管理職が増え、現場は疲弊する
- 優秀な人材ほど辞め、残るのは「変化を嫌う人」だけになる
- 組織は衰退し、最終的に競争力を失う
- しかし国の補助や親会社の補助によりゾンビのように生き残る
8. では、自分はどうすればいい?
- 適性が合わない仕事に無理に適応しようとしない
- 副業や転職で自分の適性を活かせる環境を探す
- 適材適所を見極める視点を持つための勉強と割り切る(今後、フリーランスとして生きていくためのスキル)
- 今の環境に慣れて思考が麻痺しないように注意を払う
9. まとめ
- 「適材適所が崩壊した組織」は、成果が出ないのに責任は外部に求める
- 適性を見極める力を持つことは、自分の武器になる
- 適材適所を無視する企業は、自ら考える機会を奪われた人材を生み出し続ける
適性を考慮しない会社に消耗するより、自分の強みを活かせる道を探すほうが、長期的に見て合理的な選択になるだろう。